早期離職の防止について、心理的な対策方法をご紹介します。読者対象は、早期離職者をできるだけ減らしたいとお考えの方です。早期離職の主な原因から何をすべきか考え、どのような心理対策が必要なのか具体的に解説しています。
なぜ早期離職の防止は、心理的な対策が重要なのか?
「早期離職を防止したい」そう思われている方は多いと思います。現実問題として、社会情勢がどのように変化しようとも、早期離職という道を選ぶ新入社員は一定数います。入社後、3年以内に辞める人は全体の3割に上るそうです。
このような状況を変えるためには、原因をしっかり分析してそれに見合った対応をしなくてはいけませんが、モノや制度だけでは限界があります。そこで注目すべきなのが、心理的な対策です。感じ方や考え方が変わると、早期離職を防げる可能性があるのです。
そこで、早期離職を防止するために心理的に何ができるのか、詳しくご紹介しましょう。
早期離職の防止、心理的な対策を詳しく説明します!
それでは、早期離職の防止について心理的な対策を詳しくご紹介します。
早期離職とは?
早期離職とは、就職後早い段階で仕事を辞めてしまうことを指しますが、ここでは以下のように定義してお話を進めます(一般的な定義とは違うかもしれません)。
- 新卒もしくは第二新卒であること
- 入社後3年以内の退職であること
つまり、ほとんど社会経験がない状態の人が会社を辞めることを「早期離職」とさせていただきます。
早期離職の原因や理由とは?
まず何といっても早期離職の原因や理由を知っておくべきでしょう。これが分からないと防止策の施しようがないからです。(心理的な対策というお話しからは多少離れますが、前提となる知識が無いと説明しづらいですので、少しの間お付き合いください。)
早期離職の原因や理由を知るうえで、今回根拠としたのが、厚生労働省が公開している令和2年上半期雇用動向調査結果の概要のページより入手できるデータです。その内、離職理由別離職の状況のデータを分析することで、様々な原因や理由が見えてきました。
以下、主な原因や理由です(上位6つを抽出しています)。
給料などの収入が低い
給料が低いという理由による退職は、男性の1位で全体の15%を占めます。一方で、女性の場合は19歳以下では3%にも満たないのですが、20歳以上では10%を超えています。
労働時間・休日など労働条件が悪い
労働時間や休日など、労働条件が悪いという理由による退職は、平均すると女性の1位で15%を占めます。19歳以下では9%程度ですが、20~24歳では20%を超えており、25~29歳では13%に迫っています。
一方、男性の場合は24歳以下で6%弱程度にとどまっていますが、25~29歳では13%に迫っています。
ところで、先の「給料などの収入が低い」と、この「労働時間や休日など労働条件が悪い」という2つの理由は、密接に関連している可能性があります。つまり、働いた割には賃金が少ないと感じているのではないでしょうか。
能力・個性・資格が生かせない
能力・個性・資格が生かせないことを理由とした退職は、男女ともに平均5%程度です。ただし、男性の20~24歳では9%を超えています。
仕事の内容に興味を持てない
仕事の内容に興味を持てないことを理由とした退職は、男性では平均8%弱です。一方で、女性では5%弱程度です。男性でやや高い傾向を示しています。
ところで、先の「能力・個性・資格が生かせない」と、この「仕事の内容に興味を持てない」という2つの理由は、会社側と社員側との間でミスマッチが発生している可能性が高いのではないでしょうか。つまり、どちらの希望ともズレているわけです。
会社の将来に不安がある
会社の将来に不安があることを理由とした退職は、女性では平均3%弱と低いものの、25~29歳の層では7%弱と高くなっています。一方で、男性の場合は平均7%弱ですが、20~24歳では8%弱、25~29歳に至っては12%を超える値となっています。
年齢が上がると不安感が高まっている傾向にあるようです。(日本の社会を知るにつれて不安が募るのではないでしょうか。)
人間関係が好ましくなかった
人間関係が好ましくなかったことが理由の退職は、女性ではすべての年齢層で満遍なく高い数値となっており、平均で12%となっています。一方、男性では平均9%弱ですが、25~29歳の層で16%弱と急に高くなっています。
ところで、先の「会社の将来に不安がある」と、この「人間関係が好ましくなかった」という2つの理由は、心理面での問題である可能性が高いと思われます。つまり、単純に数値で表すことが難しい問題ではないでしょうか。
早期離職のデメリットとは?
ここで、早期離職によるデメリットを考えてみましょう。新卒者が、就職後まもなくして会社を辞めてしまうと、何が起こるのでしょうか? 会社側も本人側も双方ともに、大きな損失となる可能性が高いといえます。
なぜなら、会社はせっかく見つけた社員がいなくなり、目先としては募集に掛けた数十万円の経費が水の泡となります。さらに、将来を託せる人がいなくなりますので、会社の存続に少なからず影響が出るでしょう(いわゆる事業承継の問題ですね)。
また、本人にとっては「新卒」という特権的価値を失います。第二新卒という言葉もありますが、純粋な新卒に比べると弱いでしょう。さらに、すぐに辞めてしまうような「わがままな性格の人」とか「我慢強くない人」とレッテルを貼られるかもしれません。
つまり、早期離職は誰にとってもあまり良いものではないといえるでしょう。だからこそ、対策をしっかりとすべきなのです。
早期離職にメリットは無いのか?
早期離職には、全くメリットが無いのでしょうか? もしメリットがあるとすれば、会社側としては役に立たない社員を早い段階で切れるということがあるでしょう。一方で、本人にとってはブラック企業の場合に、すぐに離脱できるのがメリットでしょう。
いずれの場合にも、後々苦しむことが無いという点がメリットですが、これは最初の採用試験の段階で見抜いていれば、このような結果にならないといえます。
早期離職の心理的な対策とは?
では、早期離職を防ぐにはどのような対策があるのでしょうか? 今回お話ししたいのは、冒頭から触れている心理的な対策です。なぜなら、すべての問題において「社員の気持ち」が大きくかかわっているからです。具体的に順を追って説明していきましょう。
収入や労働条件の対策
収入や労働条件に関して、採用時に十分説明しておくべきだと思います。それで折り合いがつかなければどうしようもありませんので、縁が無かったということになるでしょう。なので、最初のコミュニケーションでよく理解してもらうことが重要です。
また、仕事が楽しいとかヤル気を持ってできるものであれば、多少条件が悪くても頑張れるものです。あなたも、好きなことに夢中になると時が経つのを忘れてしまいませんか? それと同じことが仕事でも言えるはずです(だからと言って無理強いはブラックですよ)。
つまり、その人に合った仕事を割り当てることがとても重要なのです。これは、次の項目とも密接に関係することですね。
仕事のミスマッチの対策
自身の能力が生かされないとか、仕事に興味が持てないというのは、明らかにミスマッチが発生しています。つまり、『適材適所』になっていないということです。社員の適性にマッチした仕事や配属をして、モチベーションが上がるようにしましょう。
これができれば、先の「収入や労働条件」の項目についても解決しやすくなるはずです。自身の適性に合った仕事であればやる気が起こり、どんどん仕事をこなして生産性も向上します。結果的に収入が上がりますし、多少の残業も苦になりにくいでしょう。
ただし、どうやって適性を見抜くかという問題は残りますので、そこを解決する方法が別途必要になります。
将来の不安や人間関係の対策
将来の不安や人間関係の悩みは、心の持ちようで大きく意識が変わります。
例えば、安定している会社でも、いつかは安定が崩れると考えれば将来に不安を感じます。また、チャレンジングな会社の場合も、やはり安定しない可能性があり不安でしょう。心の持ち方がネガティブだと、どうやっても不安しか感じません。
人間関係に悩む場合は、大部分が上司の対人能力に問題があります。一言で言うと、心が成長していないといえるでしょう。誰とでも気さくに接することができるような、人との間に壁を作らないタイプでないと、上司としてはうまくいかないでしょう。
つまり、心をうまくコントロールできる人であれば、不安をうまく抑えることができるし、人間関係に悩むような職場を作ってしまうことがないのです。
企業が取るべき、早期離職の具体的な解決策とは?
企業が早期離職を防止するために、どのような対策をすべきでしょうか? 最もやりやすい方法は、研修の実施でしょう。いわゆる社員研修を行うことで、「気持ちのコントロール」ができるようにトレーニングをするのです。
その際に検討していただきたいのが、EQPI検査の活用です。この検査を行うと被検者の心の状態(感情)と本質的な性格が分かりますので、これまでご紹介してきた3つ(細かく6つ)の問題を解決するためのデータとして、とても有益なのです。
簡単に説明しますと、性格が分かるということは仕事への適性が分かります。例えば、営業職に向くのか研究職に向くのか、転勤が苦にならない、ワンマンで引っ張るタイプ、チームワークを重視するタイプなど、かなり詳細に色々と分かります。
また、心の状態が分かるということは、対人能力の高さや自身の感情コントロールができているかどうかが見えます。したがって、人付き合いのうまさ、人当たりの良さ、心の安定度などがかなり正確に分かるのです。
なお、性格を変えるのは困難ですが、心は変えられます。もちろん、トレーニング方法も分かりますので、ぜひ研修でEQPI検査を活用していただきたいと思います。
※EQPIは株式会社EQの登録商標です
まとめ
早期離職の防止に関してご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
最初に早期離職の主な原因について、上位6つを挙げました。一見するとすべてバラバラな問題のように見えましたが、実際にはすべて心理面での問題点であることがお分かりいただけたのではないかと思います。つまり、根っこの部分は同じなのです。
もちろん、給料や休みが少ないということであれば増やすのが基本ですが、それだけでは解決しない問題であるということなんです。また、早期離職は様々な理由が挙がるものの、本当は人間関係が上手くいかなかったのが真相という場合がほとんどです。
したがって、辞めた本人の問題ではあるものの、同僚や上司の対人能力にも問題があるといえるのです。全社的にEQPI検査を活用して各々の心を成長させることで、人付き合いを上手にできるような人になっていくべきでしょう。
感情コントロールが巧みにできる人を増やすことが、何よりも快適な労働環境を作り、早期離職を防ぐ現実的な手法であることにお気づきいただければ幸いです。
以上、早期離職の防止について、心理的な対策をご紹介しました。