EQ理論とは、どのようなものかを説明します。読者対象は、EQが成立する理屈や骨子の部分について詳しく知りたい方です。EQの軸にある考え方と、伸ばすための方法論について分かりやすく事例を挙げて解説しています。
EQ理論を知る意味とは?
「EQとはどんな理論なんだろうか?」そう思われる方は少なからずいらっしゃると思います。心に関することだから、「きっと心理学の一種だろう」という予測は立つのではないかと思いますが、はっきりとは分からないかもしれません。
理論を知りたいということですから、EQがどんな理屈で心を改善するのかという点が知りたいのではないでしょうか。中には心理学を疑っている方もいらっしゃると思いますが、決していかがわしいものではなく、実証データを基にして考案された理論です。
そこで、EQ理論とはどのようなものであるのか、詳しいだけでなく分かりやすくご説明していきましょう。
EQ理論とは何か、知っておくべきポイントは5つ!
それでは、EQ理論とは何か知っておくべきポイントを説明します。ポイントは5つありますので、最後までしっかりと目を通してください。
EQとは何か?
まず、EQとは何かという、そもそものところからお話しします。
EQとは「感情のコントロール能力」のことを指します。コントロールを具体的に言うと、以下のようになります。
- 自分の感情を知る(自分理解)
- 相手の感情を知る(他者理解)
- 自分の感情を活用する(自分活用)
- 場に合わせて感情を作る(関係構築)
このような感情を制御する4つの能力をEQと呼んでおり、人間はこれらを駆使することで他者との関係を良好に保っているわけです。いわゆる人間力というところに通ずるもので、この能力が高い人ほどビジネスで成功することが、統計的に分かっています。
ところで、人間は本来であればこのような調整を自然に行っているはずです。ところが、受けてきた教育や環境などの「育ち方」によって個人差が生じることが分かっています。つまり、EQが高い人と低い人が存在するのです。
誰とでもうまく付き合えるような人当たりの良い人がいたり、仕事は良くできるけれど関わりたくないと思える人がいたりしますが、これらはEQの高低に影響を受けている場合がほとんどです。当然、EQが高い人ほど付き合いやすいといえます。
これがEQの基本的な考え方であり、「心の知能指数」と呼ばれる所以でもあります。
参考 EQについては、こちらで詳しく説明しています。
EQ理論は誰が提唱したのか?
このようなEQという概念や理論を提唱したのは、イェール大学のピーター・サロベイ教授と、ニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー教授の二人です。
この二人の教授が研究したのは「ビジネスで成功した人の成功要因」で、それを心理学という視点で解き明かしたのです。分かったのは「ビジネスで成功した人は、ほぼ間違いなく対人関係能力に優れている」ことでした。
具体的には、社会での成功要因は EQが80%で、IQが20%だというのです。頭の良さは必要ではあるけれど、それよりももっと大事なのが対人能力、つまり「人付き合いのうまさ」であるということなのです。
このように、対人能力の重要性がはっきりしたために、ピーター・サロベイ教授とジョン・メイヤー教授の二人が、EQと名付けて(※)世の中に広めようと考えたのです。
※当初EIと呼ばれていましたが、のちにEQとなりました。
どうやってEQを伸ばすのか?
では、どうやってEQを伸ばすのでしょうか? これは方法論が決まっていて、行動する、もしくは行動を変えることでEQが伸びます。
「行動で感情が変わる」とはどういうことでしょうか。一般的には、楽しい時に手を叩いたり飛び跳ねたりといった行動が出ます。これは皆さん良くご存じではないでしょうか。これは先に感情が動き、それに伴って自然と行動に表れるということですね。
ところが、逆もまた真であるということなんです。つまり、『行動が気持ちを作る』とする理論で、「手を叩いたり飛び跳ねたりすると楽しくなる」という考え方なのです。感情をコントロールするためには、行動を変えることが重要であるということなんですね。
EQでは、感情コントロールを12種類に分けて「12発揮行動」と呼んでいますが、それぞれの伸ばし方が方法論として決まっています。例えば、「自分の気持ちを感じ取る力を伸ばしたいときは○○を行動に取り入れましょう」といった具合です。
こぼれ話:犬はEQの達人らしい
ちょっとした小話ですが、犬はEQを巧みに利用して感情をコントロールする達人(犬だから達犬?)らしいのです。EQが実在することを証明する参考例としてご紹介しますが、これは一体どういうことなのか簡単に解説しましょう。
一般的に、犬はうれしい時や楽しい時に「しっぽを振る」ことが知られています。あなたもご存じですよね? ところが、不安や恐怖といった感情に襲われたときにも「しっぽを振る」のです。普通に考えたらとても変ですが、これがEQなのです。
つまり、しっぽを振ることでうれしい時の感情を創り出し、不安から逃れるように感情をコントロールしているわけです。先ほどの話と同様で、「うれしいからしっぽを振る、しっぽを振るからうれしくなる」という、逆もまた真なりを示しているんですね。
なぜEQを重視すべきなのか?
さて、EQを重視すべき理由とは何でしょうか? ここでは個人の場合と、会社(組織)の場合とに分けてご紹介しましょう。
個人にとってのEQとは?
個人にとってEQは、ビジネスで成功するために必要な能力として重要です。もっと言うと、厳しい社会を生き抜くための術として、EQが必要なのではないでしょうか。先ほどからお話ししている通り、ビジネスでの成功者はEQ力が高いことが分かっているからです。
EQ力が高いということは、人付き合いが極めて上手であるということです。人間関係をうまく構築できる人は、どのような職場であっても働ける能力を持っているといえます。当然、友人やご近所ともうまく付き合っていけるでしょう。
したがって、EQ理論を意識することによって対人ストレスをあまり感じず、人生が豊かになるのではないでしょうか。
会社にとってのEQとは?
会社にとってEQは、社員間の人間関係を円滑にして明るい職場を作るうえで重要です。別の言い方をすると、社員が働きやすい環境を作ることに貢献するといえます。なぜなら、職場に対する不満の多くは人間関係に起因するからです。
働きやすい環境をつくることは、生産性の向上にも影響するでしょう。というのも、活き活きとした気持ちとやる気を持って仕事ができるからです。つまり、福利厚生や給料といったモノやカネだけでなく、人にも注目すべきだといえるでしょう。
また、退職理由の本当の理由は人間関係である場合が多いですから、人が辞めない会社を作ることにもなります。EQ理論の導入は、持続可能な会社にするための重要な術であるといえるのではないでしょうか。
EQ理論だけで十分なのか?
ところで、EQ理論だけで十分なのでしょうか? 実のところ、EQだけではすべてを網羅できない場合があります。それは、人それぞれの本質的な部分は変えられないという点が影響するからです。一言で言えば、「性格」が大きく関係します。
人それぞれに性格が異なりますが、これがその人の本質であり、EQだけではカバーしきれない部分でもあるのです。そして、性格は簡単には変えられないことも、心理学の世界ではよく知られています。つまり、EQと性格をセットにして考える必要があるのです。
例えば、EQを伸ばそうとトレーニングを始めたとします。ある人は毎日コツコツと積み重ねるのに対して、別のある人は3日坊主になってしまうことがしばしばあります。この続く人と続かない人の差は、性格の違いによる場合が非常に多いのです。
そこで、その弱点をカバーできるEQPI検査をご紹介しておきましょう。この検査は、EQと性格の両方を調べることができるもので、性格に基づいてEQトレーニングが行えます。さらに、性格が分かると、配属(人事)にも応用できます。
参考 EQPIについて、詳しくはこちらをご覧ください。
※EQPIは株式会社EQの登録商標です
まとめ
ここまでEQ理論についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
EQは二人の教授によって提唱された理論で、人間が本来持ち合わせている対人関係に関する能力のことでした。ところが、様々な理由からEQ力を必ずしも発揮できていない人が存在しているのです。付き合いにくい人が存在するのには、そのような背景があります。
しかし、EQはトレーニングによって伸ばすことができる能力ですので、いくらでも改善が可能です。行動が感情を変えるという考え方で、感情によって行動が変わるのであればその逆もあり得るという心理学的な方法論で改善を図ります。
ビジネス社会で成功している方のほとんどがEQに優れているわけですから、この能力を伸ばさない手はありません(EQPIを使えば、より完璧に近づきます)。ぜひEQ理論を取り入れて人生を豊かに、そして会社の職場環境を働きやすいものにしていただければ幸いです。
以上、EQ理論とは何か説明させていただきました。