EQの平均値について、最近の傾向をご紹介します。読者対象は、EQの平均値を知りたい管理職や人事の方ですが、個人の方が見ても参考になるでしょう。筆者が実際に調べたデータや経験から、傾向を詳しく解説しているからです。
なぜ、EQの平均値が重要なのか?
「EQの平均値が知りたい!」と感じた方が、こちらのページをご覧になられているのだと思います。EQは【こころの知能指数】といわれることもあるので、テスト受検者がどれくらいの位置にいるのか確認したくなるのは当然でしょう。
筆者はEQPIアナリストですので受検手続きを担当していますが、特に若い受検者の平均値をまとめることができました(若い受検者がほとんどなので)。すると、非常に興味深い傾向が見えてきたんです。
そこで、EQの平均値とともに、ここ最近(2023年執筆時点)の傾向をご紹介していこうと思います。
EQの平均値、最近の傾向を解説します!
それでは、EQの平均値の代わりとして最近の傾向を解説します。データの関係上、主に若い方の傾向を6つお話していきましょう。
EQについておさらい
まずEQについておさらいしておきますと、人間は頭脳の能力である IQ以外に、心の能力であるEQ(感情能力)も持ち合わせているとされるものです。このEQを育てることが、IQを伸ばすこと以上に実は大切であると考えられます。
なぜなら、 IQの高い人より EQの高い人の方がビジネス社会において成功している例が非常に多いからです。いわゆる『成功者』を調べたところ、共通点として高いEQを持ち合わせていることが分かっています。つまり、感情のコントロールが極めて重要なんです。
では、なぜ感情コントロールが重要なのかというと、対人能力に直結するからだといえます。社会で生活するうえで人とかかわることは避けられませんので、人と接する際の感情能力が大きな力となるんですね。
では、EQの最近の平均値はどうなっているんでしょうか? 詳しく見ていきましょう。
最近の若い人の平均値や傾向とは?
冒頭でお話しした通り、これまでのテストのほとんどが若い人(二十歳前後で社会人2年目)でそれ以外のデータがあまりありません。したがって、若い方のデータを基にした平均値と傾向のお話しになることを予めご了承ください。
EQテストでは12の発揮行動を0~100の値で表現しますので、それらの個人平均が出ます。また、値は50以上が高いとされます。
全体的な平均値と傾向
最近の若い方の平均値ですが、割と低いようです。具体的には、高いとされる50に届かない数値(39程度)となっています。つまり、EQが発揮されていない人が若者の中に多いということです。もちろん、中には高いEQを持ち合わせている人もいますが(13%ぐらい)。
また、EQ4構成(自分理解・他者理解・自分活用・関係構築)という大分類のうち、『自分理解』が高く(45)『自分活用』が低い(36)という傾向があります。自分の気持ちは理解できているものの、気持ちのコントロールがうまくいっていないと読み取れます。
さらに、12発揮行動という細分を個別に見た場合は、非常に興味深い傾向を読み取ることができます。発揮行動別に見るとどのような傾向があるのか、高いものと低いものを3つずつ挙げて解説していきますので、しっかりと目を通してください。
『自分認識』が高い
平均値では『自分認識』が最も高くなっていて、具体的な数値は49程度ですが、上は73を超え下は25程度と大きな開きがあります。多くの人は、自分の気持ちに興味や関心があって、何を感じているかを認識できているということです。
自分認識は、気持ちをコントロールするために欠かせない要素(発揮行動)ですので、EQの基本とも言えます。とりあえず、若い人はEQの基本を押さえることは出来ていると、考えられるのではないでしょうか。
『癖認識』が高い
平均値では『癖認識』が次いで高くなっていて、具体的な数値は47程度ですが、上は70を超え下は30程度とやはり大きく開いています。多くの人は、場面によって自分が感じやすい気持ちを理解していて、気持ちの準備をしておけるということです。
癖認識は、どんな時に気持ちが大きく動くか(いい気分、嫌な気分、流されやすい等)ということが認識できる発揮行動です。この【気持ちの癖】に対して前もって備えることで、嫌なことを回避するといったことができるということになります。
『共感』が高い
平均値では『共感』が次に高くなっていて、具体的な数値は45程度ですが、上は56を超え下は30程度とそれなりに開きがあります。多くの人は相手の気持ちを理解できていて、他者との間に信頼関係を築きやすいということです。
共感は、相手の気持ちを理解する発揮行動ですが、この能力が高いと相手と信頼関係が築きやすくなります。なぜなら、人は「自分のことを分かってくれる」と思える相手とコミュニケーションを図りたいと感じるからですが、これもある程度できているといえます。
『平静』が低い
平均値では『平静』が最も低くなっていて、具体的な数値は32程度ですが、上は64を超え下は5 程度と極端な開きがあります。多くの人は、自分の気持ちが不安定になった際に、それを落ち着かせることができていないということが言えそうです。
平静は、不安定になった気持ちを意識的に落ち着かせる発揮行動です。これができないと、気持ちが不安定な場合に「八つ当たり」「キレやすい」「気分屋」などの状態に陥りやすくなります。若い人は、あまり冷静な対応ができていないといえます。
『動機づけ』が低い
平均値では『動機づけ』が次いで低くなっていて、具体的な数値は34程度ですが、上は57を超え下は14程度とやはり大きく開いています。多くの人は、相手の気持ちに対して積極的に働きかけることができていないということです。
動機づけは、他者に対して働きかけることで、前向きな場の空気を生み出す発揮行動です。これができていないということは、個人プレーが目立ったり必要な時に必要なことが言えなかったりします。若い人は、他者をうまく巻き込めていないといえます。
『実行』が低い
平均値では『実行』が次に低くなっていて、具体的な数値は35程度ですが、上は61を超え下は18程度とこちらも大きく開いています。多くの人は、自分の気持ちを行動に移すことができていないということです。
実行は、気持ちを行動に起こし、その結果を振り返り次の行動に活かす発揮行動です。これができていないということは、自身の気持ちに振り回されたり想像力が働かなかったりします。若い人は気持ちを行動に移しにくく、マニュアル通りに動くといえます。
なぜこのような結果なのか?
若い人のEQが低いという点は少々残念なんですが、高い発揮行動と低い発揮行動を見比べることで、ある傾向が読み取れると思います。それは、現代の社会をそのまま反映していると感じられる点です。
現代は個の時代ですので、若い人の間では自分を強く押し出すことが一般的です。また、SNSの普及によって共感が重視されています。その結果、『自分認識・癖認識・共感』といった発揮行動が鍛えられたのではないかと思われます。
その一方で争うことを好まず、誰かに従って目立たないようにすることを重視するのが、現代の若者でもあります。その結果、『平静・動機づけ・実行』といった発揮行動があまり鍛えられていないのではないかと思われます。
日本では心の教育に力を入れていない場合が多く、社会情勢がそのままEQに表れてしまっているのではないでしょうか。
まとめ
ここまで、EQの平均値についてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか?
手持ちのデータの関係上、若い方の平均値に限定したお話となりました。全体的な平均値で受ける印象は、あまりEQが育っていないというものです。どうしても学校教育ではIQを優先してしまうので、このような傾向はここ数十年の特徴だといえるでしょう。
また、細かく傾向を分析すると、『自分認識・癖認識・共感』といった現代の社会で必要とされるEQは比較的高いことが分かりました。一方で、『平静・動機づけ・実行』といった発揮行動はあまり必要とされていないためか、低いことも分かりました。
若い方のEQがいびつになっていることから、必要とされるものだけ伸ばすような生き方をしていることがうかがえます。ある意味では合理的だといえますが、これでは偏っていますので満遍なく伸ばすような心の教育が必要ではないでしょうか。
以上、EQの平均値について最近の傾向をお話ししました。